労働組合

労働条件|労働協約|労働協約は誰のものか

 労働協約は、原則としてそれを締結した労働組合の組合員にのみ適用されます。しかし、労働者がすべて組合員であるとは限りません。何らかの事情で組合に加入していない場合もあります。それらの労働者が組合員より低い労働条件で雇用されていると、労働協約で比較的高い条件を取り決めても足を引っ張られることが考えられます。そのようなことから労働組合法第17条では、組合が一定の要件を満たした場合、その組合が締結した労働協約は、当該組合の組合員以外のものにも自動的に拡張適用されるとしています。この効力を「労働協約の一般的拘束力」と呼んでいます。

労働協約を定めるときは明確な表現で

 協定、覚書、議事録など、どんな名称のものでも、労使間で取り決められたものであれば、法的には労働協約として認められることになります。しかし、せっかく定められた労働協約が、文句や表現があいまいであることによって、後になってその解釈や運用をめぐって紛争が起きることがあります。これを防ぐためには、労働協約には適切で明確な表現を使うことが望まれます。
 また、労働協約には、個々の事項をその都度文書化した「個別協約」と、それらの事項を体系的に一括した「包括協約」とがあります。どちらも効力において差はありませんが、管理の容易性、分かりやすさ、そして労使関係の長期安定化のためには、「包括協約」として締結することが望ましい姿です。

日本の労働協約のあゆみ

 労働協約の起こりは労働組合の起こりと同時だった、と考えられます。労働者が、お互いに労働力の安売り競争をやめて、団結することで、より有利な条件で自分たちの労働力を売ろう、としたときに労働組合は生まれました。もちろん最初はなかなか合法化されず、苦しい戦いを強いられていたわけですが、組織率が高まり労働組合の力が大きくなると、使用者側もそれを無視して労働力を得ることが難しくなり、労働組合と取引をしながら労働力の確保をするほかなくなりました。この取引の際の協定が最初の労働協約となったのです。
 明治時代は、官吏や海員などのごくわずかの例外を除いて労働法規も就業規則もなかったので、労働者を低賃金で長時間使用することができました。そのため、労働組合は、一定の技術工だけに限定され、明治33年に制定された治安警察法によってストライキなども制限されたので、協約が存在してもごく少数例だけでした。

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