アサーション(assertion)とは、自分の意見や気持ちを相手の立場も尊重しながら上手に伝えるコミュニケーションスキルのことです。アサーションは直訳すると「自己主張」という意味ですが、日本語の「主張」には自分の意見や要望をむりやり押し通したり、相手が同意するまで説得したり、一方的に言いたいことだけを言い放つといったイメージもあり、コミュニケーションスキルにおけるアサーションとは少し意味合いが異なります。
私たち日本人は主語を省略した会話が成り立つため、常日頃、無意識のうちに “あなた” を主語としたYOUメッセージで相手を傷つける発言していることがあります。“私” を主語に自分の感じていることや考えを表現する I(アイ)メッセージで主張しつつも、互いが不快にならないアサーションは、主張することが苦手な人や、聞き手に回ってばかりという人にもおすすめの方法です。
自己主張の仕方には「アグレッシブ」「ノン・アサーティブ」「アサーティブ」の3つのタイプがあります。
アサーティブな自己主張の基本は、Iメッセージを使ったコミュニケーションです。“私” という主語を入れた、「私はあなたに○○してほしい」(I Want)といった肯定的な表現を用います。「あなたは○○しなければならない」(You Must)で語るYOUメッセージとは違い、相手を責めたり、傷つけたりせずに自分の意見や気持ちを伝えられます。
Iメッセージで相手の行動や言葉に対して意見を述べるときには、押さえておきたいポイントがいくつかあります。
1つ目は、思いを素直に表現することです。お願いしたいことがあるのに、なかなか相手に伝えられない場合などは、まず「私は〇〇に困っている」「私は今、悩んでいることがある」と話しかけてみてください。相手が受け入れる態勢を整え、聞く姿勢を持ってもらう状況をつくり出します。
2つ目は、自分の立場から、その困っていること、悩んでいることを具体的に説明することです。こうした意思表示は相手に対する非難や否定ではありませんので、相手も認めざるを得なくなります。
そして3つ目は、自分の希望を言うこと。相手が状況に理解を示しているところに、改善してほしいことなどを率直に伝えるのです。さらに「〇〇はどうですか?」などリスニングや前向きな提案ができると、ネガティブに伝わりがちな情報も相手に不快な思いをさせずに善処策が検討できます。
このほかにも、Iメッセージの伝え方はいくつかあり、「行動」「影響」「感情」の3部構成を意識するという方法もあります。