ファシリテーション(facilitation)とは、会議や研修など人が集まるさまざまな「場」において、グループ活動が円滑に進むように中立的な立場でプロセス(進行過程)をサポートし、グループとしての成果を生み出す方法をいいます。参加者同士の相互作用を使って認識の一致を確認したり、相互理解を深めたりすることで、問題の解決、気づきや学びなどを促進します。ファシリテーションの応用分野は広く、ビジネスをはじめ、コミュニティやまちづくり、NPOなどの社会活動、教育・学習等の分野で活用されています。
ファシリテーター(facilitator)はファシリテーションを行う「促進役、進行役」のこと。いわゆる司会者や議長の役割とは違い、その場を通じて創発(具体的・行動的なアイデアを出すこと)を促し、合意形成を支援します。あくまで中立的な立場で、参加者を指導したり、自ら意見を述べたり、意思決定をすることはありません。
場の活性化を担うファシリテーターには、「関係性をデザインして場の雰囲気をつくる」「コミュニケーションの促進を図る」「議論の全体像を整理してまとめる」「参加者の合意・結論を確認する」といったスキルが求められます。
《ファシリテーターの立ち位置》
ファシリテーションの具体的なやり方として、「事前準備」と「当日の運営」について手順を追ってみましょう。
会議をうまく進めるために、当日の参加者数やテーマを十分考慮し、最適な空間づくりと確実な告知を心がけます。
会議室のレイアウトは、人数が少なく狭いスペースの場合なら、L字型の座席配置がおすすめです。人は向かい合う位置の人にエネルギーを向ける傾向があるので、それに即した座席レイアウトを検討しましょう。また、最も意見の出やすいグループ構成は6〜8人といわれており、この単位で編成すれば、会議が活性化しやすくなります。
会議の詳細をあらかじめ参加者に通知しておくことも重要です。参加者が戸惑わないように、掲示、回覧、口頭伝達などから、より正確かつ迅速に伝わるものを選びましょう。
《開催通知に明示するポイント》
主催者/日時・場所/参加者/会議の性質<例>問題解決型、意見集約型、報告型、創造型/会議の目的(招集の理由)・ゴール/事前質問、事前課題、必要備品 など
【場づくり(オリエンテーション)】
まずはオリエンテーションで、会議の目的と目標の確認、進め方・タイムスケジュール、スタッフ紹介、議題・テーマの確認を行い、その場のルールへの協力を依頼し合意を得ておきます。例えば、会議冒頭に「職場での上下関係なし」「お互いに対等に議論する」というルールを設定しておけば、部署内で先輩・後輩の関係にある参加者が意見を言いづらくなったり、一部の参加者だけが発言したりするのを回避できます。アイスブレーキングで参加者同士の関係性を和らげておくのもいいでしょう。
またファシリテーターとは別に、必ず書記を決めておくことが大切です。議事録に記載する内容は、日時、場所、出席者、議題・テーマ、合意事項(あるいは懸案事項)、実行計画などです。論点の整理が必要なため、書記はできるだけ中立的な立場で、要約力のある人に頼むようにします。
【アイデアの抽出・整理】
ファシリテーターには、与えられた議題やテーマに対して参加者からできるだけ多くの意見やアイデアを引き出すこと(発散)が求められます。付せんやホワイトボードなどを使ったブレインストーミングでたくさんのアイデア出しを行いましょう。
アイデアの整理には、議論を図式などで「見える化」するファシリテーション・グラフィックを用いると相互理解が促されます。
アイデアを出すための4つのルール
【合意形成(議論の統合)】
多くの意見やアイデアを整理・統合したら、ファシリテーターは議論の質をよく見極めたうえで、参加者がWin-Winとなる意思決定による合意形成をサポートします。
このとき、グループワークでは、声の大きい人や極端な意見になびき、明確な事実・実態や理由がないまま誤った結論を導き出してしまう「リスキーシフト(集団極性化)」、行き過ぎたリーダーへの忠誠などから、不合理的な愚かな意思決定をしてしまう「グループシンク(集団浅慮)」になりやすい傾向があります。議論を整理していく中で、論理的ではない、あるいは納得感のない合意となりそうな場合は、参加者の認識が一致しているか再確認を経て、議論全体の修正が必要です。
会議終了後は早急に議事録をとりまとめて共有するなど、決定事項の実践に向けてスピード感のある行動を意識しましょう。